ペットボトル等の茶飲料に含まれるカテキン類は加熱によりそのフラバン-3-オールのC環3位が異性化する。本研究では、茶飲料に含まれる(-)-エピカテキン(以下ECと略す)とECの立体異性体である(-)-カテキン(以下Cと略す)の生体利用性について実験動物を用いて比較検討した。昨年度に開発した方法に従い、EC溶液を高温・高圧下で処理し、Cを誘導し、さらに合成吸着樹脂(トヨパールHW40)による分離・精製の後、動物実験に供するサンプルを得た。5週齢のICRマウスに、EC、Cをそれぞれ経口投与(100mg/kg)し、投与30分、60分後に心臓より採血した。得られた血液中のカテキン濃度は、β-グルクロニダーゼ、スルファターゼを用いて脱抱合し、固相抽出カートリッジ(OASIS HLB(日本ウォーターズ))による精製後、高速液体クロマトグラフィー-電気化学検出器によって定量した。一方、上記の酵素処理を行わない場合においては遊離体として血中濃度を求めた。ECの血中濃度(抱合体+遊離体)は投与60分後よりも投与30分後で高く、いずれの採血時間においてもCに比較して有意に高値であった。一方、それらの血中動態としてほとんどが抱合体であったが、トータルの血中濃度に対する遊離体濃度の比率は、ECの方がCに比較して有意に高い値を示した。以上の結果より、カテキン類の立体構造の違いにより生体利用性に有意な差異が認められ、またその体内動態にも影響することが示唆された。カテキンの有する様々な機能性あるいは安全性の観点からさらにフォーカスを当てて研究する必要があると考えられた。
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