本年度はまず、宇宙開発とコンピュータ開発のそれぞれの分野についての歴史的・社会学的考察に関する関連文献を探索し精査した。その上で、技術システム全般のアーキテクチャに関して、最近特に顕著な動きが見られることに鑑み、関連文献にあたった。すなわち、電力システム分野におけるスマート・グリッドに関する研究開発の推進、またコンピュータ分野におけるクラウド・コンピューティングの展開である。これらの動きは技術システム全般のアーキテクチャの変遷を考えるとき、きわめて意義深い歴史的事象であるといえ、戦後の技術システム史を通観するとき無視することはできないものである。このことを勘案し、本研究全体の構想を再構築した。 また、技術システムの歴史を検討するとき、さまざまな技術システムの開発・構築を可能にした資金及び人材について深く検討することが重要であることを認識するに至った。例えば、米航空宇宙局(NASA)や国防高等研究局(DARPA)等が果たした役割について正確に把握しておく必要がある。より一般的に、本研究を進めるにあたっては、米国及び日本の科学技術政策について幅広く整理しておく必要があると考えられることから、関連文献にあたりつつ事実関係をとりまとめた。その結果は、1件の雑誌論文及び2件の学会発表の形で発表した。 本年度は、以上の周辺調査を主に進めたため、一次資料に踏み込んだ調査を展開することはできなかったが、本年度の成果を踏まえ、来年度以降はアーカイブ調査を進めていく予定である。
|