本研究は、インド・カルナータカ州マンガロール郡を調査地として、ブータ祭祀と呼ばれる神霊祭祀を多角的に検討した人類学的研究である。研究代表者は、地域社会のポリティカル・エコノミーを分析するとともに、神霊と人間の交渉について現象学的視座を用いつつ検討した。本研究によって、地域の自然に根ざしたブータ祭祀は村落社会の土地保有制度と母系制、家系/カースト間の分業と密接に関わっており、故に村落における家系間のヒエラルキーの再構築を可能としていることが明らかになった。また、憑依儀礼における神霊と信者の交渉と託宣を通して発揮される神霊のエイジェンシーが、人々の社会関係に大きな影響を及ぼしていることがわかった。
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