研究概要 |
本研究では視線解析と分類画像法とを組み合わせ,自人種顔弁別,他人種顔弁別時の視覚情報処理特性を詳細に示すことにより,他人種効果の原因を明らかにすることを目的とする.より具体的には,1) 分類画像と視線解析を同時測定し,解析する手法を確立する。2) 自人種顔,他人種顔弁別間で,視線分布に違いがみられるかを検討する.3) 自人種顔,他人種顔弁別間で,分類画像に違いがみられるかを検討する。4) 自人種顔,他人種顔弁別間で,視線分布と分類画像との関係を検討する。5) 以上から,顔情報処理における他人種効果の原因を明らかにすることを目的とする。初年度は本目的達成ための根幹となる1)のステップに十分な時間をかけ,従来よりも高解像度の刺激を用いて詳細な検討を行うこととし,より精密な刺激提示,並びにデータ解析に必要な実験システム(高精度色彩輝度計の導入等)を確立した。従来の分類画像法の実験では,1種類の顔ペアを弁別する実験だけを行っていたが,その場合,特定の刺激セットに依存した結果であるとの批判がある。今年度は日本人被験者5名に対し,2種類の日本人顔ペア,および2種類の外国人顔ペア,を弁別する実験を行った。実験では,反応一貫性分析を導入することにより反応決定に関わる内部ノイズを調べることにより,試行毎に異なるストラテジーを行ったか否かを検討した。まず,コントラスト閾値については明確な他人種効果は認められなかった。加えて,内部ノイズについても一貫した差異が認められなかった。このことから,他人種効果はCI法,反応一貫性分析で捉えることのできない,顔情報の非線形的な利用による可能性が指摘される。この非線形的な方略については,今後継続的に視線解析を利用した実験を行い,検証していく。
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