研究概要 |
本研究3年目は,(1)カナダ調査,(2)国内調査,(3)成果の中間まとめ,(4)学会発表準備,の4つの課題に取り組んだ。 第一のカナダ調査では,ブリティッシュ・コロンビア州における学校の市場化と教員の関係に焦点を当てた。具体的には,ブリティッシュ・コロンビア州教員連盟と,同州の主要な教員養成機関の1つであるサイモン・フレーザー大学に所属する研究者に対してインタビューを行った。学校の市場化に批判的な人たちのあいだでも,教育予算の増額が見込めない今日,市場化の流れは止められないものとして理解されているという結果が得られた。 第二の国内調査については,民間企業による出張授業を関東地方の公立小学校2校で観察し,企業側の担当者へのインタビュー調査も行った。観察したのは社会科と理科の学習内容に関連づけたプログラムだったが,どちらも社会貢献というよりマーケティング目的で実施されていることが明らかにされた。 第三に,成果の中間まとめとして前年度にケベック州で行った調査に基づく論文の執筆を進めた。ここでは,州消費者保護局が小学校教員と共同で作成した広告教育教材を,州の学校コマーシャリズム対策と健康政策の観点から分析した。また,ブリティッシュ・コロンビア州の教員の公教育に対する認識を分析するための基礎的な作業として,同州教員養成制度の歴史およびサイモン・フレーザー大学における養成プログラムの開発過程についての論文を執筆した。 第四の課題は,2012年5月開催のカナダ教育学会(Canadian Society for the Study of Education)年次大会での発表プロポーザルの作成であった。この発表は上述の日本における企業の出張授業とそれが普及する社会的背景の解明を目的とするものであり,プロポーザルは審査の結果,受理された。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の最終年度を迎えるため,成果をまとめ,学会大会や論文誌上で発表する準備を集中的に進め,必要に応じて追加調査を行う。これらの作業や,学会発表を通して新たな課題が浮上することが予想されるが,当面は本研究の目的の達成を優先させ,余力があれば,次の研究を見据えた課題整理にも取り組みたい。
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