本年度は、筆者が平成17~19年度に科学研究費補助金を得て行った「吃音を持つ児童生徒に対する教育的指導・支援プログラムの開発」で作成した包括的・総合的な吃音評価システム(以下、本システム)を基に、(1) 評価項目の精選と改訂版本評価システムの作成、(2) 改訂版本評価システムを用いた吃音がある幼児・児童の実態調査に取り組んだ。 その結果、(1) 本システムの内容を検討し、14項目計104問から構成される改訂版本評価システムを完成させると共に、保護者に対する質問紙、子どもとの評価面接に使用する教材シート等を作成した。改訂版本評価システムは、A.毎日の生活の状況(ことばの教室、家庭、学校等における困難や支障の程度に関する質問から構成:計32問)、B.吃音の言語面と心理面の状況(吃音の言語症状や吃音の心理面の状況に関する質問から構成:計32問)、C.認知・言語・運動発達の状況(言語・認知・運動発達と情緒・情動の障害の有無や状況に関する質問から構成:23問)、D.幼児・児童を取り巻く環境の状況(家庭、学校等における主に対人的な環境に関する質問から構成:15問)から構成され6件もしくは4件の選択肢を設けることで、比較的短時間に評価が行えるように工夫を加えた。(2) 関東、北陸地域のことばの教室担当教員や病院勤務の言語聴覚士計8名に依頼し、改訂版本評価システムに基づく幼児・児童(計87名)に対する実態調査質問紙の発送を行った。 来年度は、改訂版本評価システムの標準化をめざし、本年度行った実態調査の結果に分析・検討を加えていく予定である。
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