本年度は、平成21年度に実施した吃音がある児童・生徒の実態調査質問紙の回答(幼児・児童87名分)の分析を行うと共に、この分析結果を踏まえた「幼児・学童版の包括的・総合的な吃音評価システム」(以下、評価システム)の作成を行った。 児童・生徒の実態調査質問紙の分析は、吃音の言語面の特徴(言語症状)と、毎日の生活の状況、吃音の心理面の状況、認知・言語・運動発達の状況、幼児を取り巻く環境の状況との間の関係性について、相関分析を用いた分析を行った。その結果、(1)吃音の言語症状の内、語音のつまり(ブロック)と、毎日の生活の状況、吃音の心理面の状況、認知・言語・運動発達の状況、幼児を取り巻く環境の状況との間に有意な負の相関関係が見られる、(2)それ以外の吃音の言語症状、(語音の繰り返し、引き伸ばし等)とこれらの項目との間には相関関係は見られない、(3)年齢と吃音の言語症状やこれらの項目との間には相関関係は見られない、ことなどが明らかになった。この結果は、吃音の言語症状の中でも、とりわけ語音のつまりが吃音問題の深刻さに影響を及ぼすことや、吃音の進展には加齢の要因よりも語音のつまりの有無がより関与している可能性があることを示唆するものである。 評価システムの作成においては、前述した分析結果を踏まえ、吃音の言語症状の中でも、特に語音のつまりの評価が精緻に行えるようにすると共に、対象者間であまり評価に差がなかった項目を削除する等、質問項目の構成や内容に変更を加えた。 来年度は、本年度作成した評価システムを幼児・学童に再度実施してもらい、評価システムの最終版の作成を行う予定である。
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