テトラキス(2-チエニル)メタン(1)を基盤とする正四面体型拡張巨大オリゴチオフェンのモルフォロジーに関する知見を得るため、昨年度合成に成功した末端にヘキシル基を有するテトラキス(ターチエニル)メタン(Hex-3T)_4Cや1のデンドリマー分子であるテトラキス(5-(トリス(2-チエニル)メチル)-2-チエニル)メタンG1の示差走査熱量測定を行った。 (Hex-3T)_4Cを10℃ min^<-1>で昇温すると150℃で融解のピークが観測された。続けて同じ速度で温度を下げても結晶化による発熱ピークは観測されず、融解後200℃ min^<-1>で急冷する事により0℃付近でガラスへの転移に由来する段差を観測した。ガラス状態の(Hex-3T)_4を10℃min^<-1>で昇温すると60℃付近で冷結晶化のピークが見られ、145℃と150℃に吸熱ピークが観測された。この事は(Hex-3T)_4Cに準安定相がある事を示しており、(Hex-3T)_4Cが安定なコンホーマーを複数有する分子である事を示している。また、末端に置換基がない誘導体(3T)_4CについてもDSCを測定したが複数サイクルの測定ができず、ヘキシル基を導入する事によって熱安定性が著しく向上する事が分かった。 一方、デンドリマーG1の示差走査熱量測定により、X線結晶構造解析で明らかにした結晶構造は準安定相の結晶であることがわかった。この結晶は220℃で相転移し、最安定相は260℃に融点を示す事が明らかになった。興味深い事に試料の冷却速度を調節する事により、G1のモルフォロジーを制御できる事が明らかになった。すなわち、冷却速度が遅い時は最安定相への結晶化のピークが観測されるが、冷却速度を200℃にすると80℃でガラスへの転移による段差が観測された。G1のガラス状態は140℃まで安定であった。
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