研究課題
癌の光化学療法である光線力学療法に用いる薬剤(光増感色紙)の開発を行った。本課題では、我々がこれまでに開発してきたケイ素型光増感色素のさらなる高効率化、及び腫瘍選択性を向上させるためにシリカナノ粒子との複合化について研究した。光増感色素の改良に関しては、以前に合成したシリル基を有する水溶性ポルフィリンの親水置換基をスルホ基からカルボキシル基に変更したところ、一重項酸素の光増感効率は0.66から0.72へと増加した。また、癌細胞による色素取り込み効率も40%向上し、光照射によって培養癌細胞を殺傷する能力は10倍近くに向上した。さらに担癌ヌードマウスを用いて新しい光増感色素の評価を行ったところ、非ケイ素型色素では腫瘍選択的集積性は見られなかったのに対し、ケイ素型色素では筋肉と腫瘍で10倍の濃度差が観測され、ケイ素型にすることにより腫瘍への選択的集積性が向上することがわかった。これらのケイ素の効果により、癌治療効果が著しく向上し、腫瘍の治癒に成功した。この成果については特許出願した。一方、シリカナノ粒子との複合化については、光増感色素にシランカップリング基を導入してからシリカ表面に修飾する方法と、反応性基を有するシランカップリング剤でシリカ表面を修飾した後、光増感色素を導入する方法のどちらでも複合化に成功した。シリカ表面に修飾した光増感色素は有機溶媒中では単量体として存在し、一重項酸素を高い効率で光増感したが、水溶液中では色素が会合体を形成してしまい、一重項酸素の増感効率が低下してしまうことがわかった。会合を抑制するために、1.表面色素密度を低下させた、2.色素を水溶性の化合物に変更した、が回避できなかった。今後会合を防止するために、ケイ素置換基をさらに嵩高くすることなどを検討する必要が有る。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (18件) 産業財産権 (1件)
J.Photochem.Photobiol.A
巻: (印刷中)
J.Phys.Chem.C
巻: 115(14) ページ: 6902-6909
J.Porphyr.Phthalocyanines
巻: 15(1) ページ: 47-53
Dalton Trans.
巻: 39(39) ページ: 9421-9426
Electrochemistry
巻: 78(3) ページ: 191-193