近年、セリンプロテアーゼはコラーゲン、カゼイン、フィブリン、プリオンなどの難分解性タンパク質を分解することから、産業廃棄物利用や血栓症および神経疾患への応用に期待されている。しかし、本酵素群の高次構造を有するタンパク質基質に対する認識メカニズムは未だ明らかになっていない。そこで本研究では、研究代表者が見出した高活性なコラーゲン分解酵素であるStreptomyces omiyaensis由来セリンプロテアーゼ(SOT)をモデル酵素として取り上げ、基質高次構造の認識メカニズムを明らかにし、血栓症やアルツハイマー病等の難分解性タンパク質を原因とする疾患への応用を目指した研究を行っている。これまでにSOTはStreptomyces griseus由来Trypsin (SGT)と77%の相同性を持つにも拘らず、タンパク質基質の高次構造の認識に違いがあることを見出している。本年度は、これらのタンパク質基質の認識の違いに寄与する残基の特定を行った。 RIBS shuming法を用いて、SOTとSGTのキメラライブラリーを作成し、タンパク質基質に対する活性を比較した結果、アミノ酸領域52-72が高次構造の認識に関与することが示唆された。さらに、変異体を用いた詳細な解析により、Tyr71がタンパク質基質の高次構造の認識に寄与する残基であることを明らかにした。この残基は、蛍光スペクトルおよびCDスペクトルの解析結果から酵素自身の構造にも大きな影響を与えることが示唆された。SGTの立体構造に基づくSOTのホモロジーモデリングの結果、Tyr71は立体構造上で触媒部位から離れていることがわかった。
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