本研究の目的は、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon : DLC)薄膜作製において、擬火花放電プラズマジェットをプラズマ源に用いた新たなプラズマ化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition : CVD)法による成膜源の開発である。本手法は大電流放電であることから高密度プラズマを容易に生成でき、且つ、アーク放電に比べて電極の損傷が少ないという利点を有する。以下に今年度の成果についてまとめる。 1.成膜速度の向上;プラズマジェットのイオン密度Niは放電電流値の増加に比例してNiも増加したが、絶縁破壊電圧およびガス流量による増加は見られなかった。また、上述のパラメータの変化に対するプローブピーク時間の特性を調べた結果、放電電流と絶縁破壊電圧の増加に対してピーク時間も早まる傾向が見られたが、ガス流量には依存しなかった。以上の結果から、電流を増加させることで成膜速度の向上が期待できることがわかった。 2.DLC成膜実験;ガスはCH4をH2(流量2mL/min)で7%程度に希釈し、成膜実験を行った。プラズマの発光スペクトルを分光器で観測した結果、プラズマの発光からCHおよびC2の励起分子が含まれていることを確認した。陽極から下流50mmの位置にSi基板を配置し、イオン引込み電圧を-40V、放電回数200回で成膜を行った結果、直径が約60mm、膜厚が~10μmの膜が堆積することを確認した。また、基板温度は400℃以上で基板への良い密着が得られることがわかった。
|