平均引張挙動構成測構築のための基礎データを得るため、鉄筋が腐食したRC棒部材の一軸引張試験を鉄筋比および腐食量をパラメータとして行った。その結果、鉄筋比による付着挙動への顕著な差は健全時と同様であり、特に腐食による影響は認められなかった。 また、引張試験により得た腐食鉄筋を用いて、3次元レーザースキャナーによる鉄筋断面減少量の計測精度を、重量計測による鉄筋断面減少量との比較により確認した。スキャナーによる鉄筋断面減少量は重量計測によるものと一致し、さらに鉄筋の断面分布は重量計測に比べ、より局所的な分布を把握することが可能であることを確認した。統計パラメータの検討を行うため、レーザースキャナーの鉄筋断面計測結果と腐食ひび割れとの相関について検討を行ったところ、断面減少量の平均区間が大きくなると、平均断面減少量と平均腐食ひび割れ幅の相関が高くなる傾向が認められた。 さらに、鉄筋腐食後のRCはりの変形性能を確認するため、鉄筋比が異なる腐食RCはりの曲げ載荷実験を行い、腐食後の引張挙動が変形性能へ及ぼす影響を検討した。実験の結果、健全時の鉄筋比が大きい場合に、鉄筋腐食量が大きくなり鉄筋量が減少すると曲げ終局変位が小さくなる傾向が見られ、健全時に見られる鉄筋量が減少すると曲げ終局変位が増加する傾向と異なった。これは、鉄筋腐食による付着劣化により、変形すなわち破壊が局所化することによって起こると考えられる。従って、腐食後の引張挙動構成測の必要性が確認されると共に、平均引張挙動構成則構築後、解析により構成則を検証するための有意な実験データを得ることができた。
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