研究概要 |
今年度は,前年度じ実施した,平均引張挙動構成測構築のための実験においてより精緻なデータを取得するため,専用載荷フレームを製作して同様の試験を行ったが,有用なデータを取得することができなかった。一方,本研究にて開発する平均引張挙動構成測の適用性検証の目的として,前年度行った鉄筋腐食RCはりの載荷実験において,付着劣化が曲げ変型性能に対して大きく影響することが明らかとなったため,今年度はさらなる追加データ取得ための実験実施と,また,RCはりの実験結果に対して,付着を直接考慮出来,精緻だが実務ではあまり扱われない離散鉄筋モデルと,本研究で開発するモデルを適用する分散鉄筋モデルを用いてパラメトリック解析を行い,各種鉄筋モデルの腐食RCはりの曲げ性能評価に対する適用性の検討,並びに解析の入力データとして必要な腐食分布レベルの検討を行った。 検討結果から,平均断面減少率が30%となり局所的な破壊性状を示すような腐食が激しいレベルの場合,形状スキャナーを用いた細かい腐食分布を適用しても耐力は実験に近づくが過大評価となり,以下に最小断面を調査で測定するかが重要であることを明かとした。また,付着を直接考慮できない分散鉄筋モデルや,離散鉄筋を用いても剛結の場合は,耐力の過大評価と実験とは異なる破壊位置を示し,変型性能のみならず耐力や破壊性状を評価できないことを明らかとした。さらに,付着を直接考慮できるモデルであっても,耐力は概ね評価できるものの,付着軟化の扱いなどによって破壊位置を評価できないことを明かとした。従って,平均引張挙動構成測については分散鉄筋モデルそのものの制約により,適用範囲が制限される可能性と,このようなモデルの適用限界を示す必要性を明らかにすることができた。
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