本課題はこれまで研究的蓄積の少ないボンベイ改善トラスト(以下、BIT)による住宅供給事業を対象に、その歴史的展開を明らかにすると共に、供給された住宅の特性や存続状況の記録も目的としている。このBITによる住宅供給事業はアジア地域における公的住宅供給実績としては最も初期の事例の一つであり、集合住宅の建設史上極めて重要なものと位置づけられる。本年度は前年度の調査を基に、資料調査の範囲を拡大し、また他地域における同種の事業展開についても資料集並びに現地視察・調査を行った。 1)BIT年次報告資料に基づく住宅供給実績の全貌把握 本年度はBIT中期の資料を重点的に調査した。また関連するBombay Development Departmentによる集合住宅供給事業についても調査し、住戸計画の特徴などを記録した。このBDDによるチョールはいずれもフラットの形式を取り、従来のBITによるチョールとは便所・水回り等の使用が異なる。また、一事業地あたりの供給戸数もBITに比較して多い。BDDについては、BITの後継団体としての住宅供給事業の継承過程について資料収集・分析を継続している。 2)他地域におけるトラストによる住宅供給事業の実態調査 インド国内ではチェンナイ、国外ではシンガポールにおける事例を調査・視察した。シンガポールの事例については、現在も一部が存続しているが、住棟・住戸計画に相違点が多い。供給手法の比較については資料収集の必要があり、来年度以降のとりまとめを目指している。
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