研究概要 |
本課題はこれまで研究的蓄積の少ないボンベイ改善トラスト(以下、BIT)による住宅供給事業を対象に、その歴史的展開を明らかにすると共に、供給された住宅の特性や存続状況の記録も目的としている。このBITによる住宅供給事業はアジア地域における公的住宅供給実績としては最も初期の事例の一つであり、集合住宅の建設史上極めて重要なものと位置づけられる。本年度は、予定した資料調査をすべて完了することができた。また,BITによる現存する集合住宅のうち、計画上特徴を持つもの、類型の代表例、また建て替えが予想されるものについて実測を行い、資料化した。 1)BIT年次報告資料に基づく住宅供給実績の全貌把握 本年度はBIT末期の資料を重点的に調査した。概ね1920年代以降のBIT末期の資料においては、住宅供給に関する記述が事業の存在に関わらずきわめて少ない。本文中から記述の抽出が困難なものについては、財務資料なども調査し、計画の過程の把握につとめた。財務資料については、一定の年度ごとに電子資料化を試み、追加調査が可能なように資料の整備を行った 3年にわたる資料調査の結果、BITの住宅供給に関してはほぼ全体を網羅することができ、計画上の概念の変遷など様々な角度から供給された住宅の評価が可能な状況となっている。 2)現存する旧BIT集合住宅(BITチョール)の実地調査 今年度は携帯に特徴のあるもの、また近い将来の立て替えが予測される4カ所のBITチョール(Mazagaon, Kohinoor mill. Mandovi-Koliwada, Love lane)について実測調査を完了した。 3)まとめ これまでの成果を元に、BITチョールの計画上の特性ならびにその周辺地域に与えた影響について考察を加えた。端的には住戸プランと住棟プランの変遷過程の相違、またこれらの地域的共通性が大きな特徴として指摘できた。
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