本年度は、サンタ・マリア・マッジョーレ洗礼堂(ノチェーラ)およびサン・ミケーレ・アルカンジェロ聖堂(ペルージャ)の現地調査を実施した。 サンタ・マリア・マッジョーレ洗礼堂ではく三次元レーザースキャナを利用して会堂内の三次元計測を実施した。この建築では初めての三次元実測であり、基礎データとして重要な意義を持つ。外壁部についても実測する予定であったが、天候が悪化して残念ながら実測することができなかった。しかし、曲率が途中で変化する中央ドーム内面の形状を正確に計測し、また周歩廊外壁に残る開口部の痕跡や修復の痕跡を記録することができた点で、大きな成果であった。今後、本研究で検証を進めているアプシスへ向かう軸線と開口部の関係を、本実測に基づく三次元モデルによって分析していく。 またサン・ミケーレ聖堂では、レーザー距離計によって堂内各部の実測を行った。環状列柱のそれぞれの柱間と、柱頭・柱身のスポリア材および柱台によって示された十字型の軸線、およびその軸線から外して配置された本来の入口との関係について考察を進めている。特に、アプシス軸線と正対しない入口およびスポリア材という特性については、本研究の対象であるサンタ・マリア・マッジョーレ洗礼堂とアギオス・セルギオス・ケ・バッコス聖堂にも共通する特徴であることは注目すべき点である。初期中世に建設された集中形式において、この特別な配置がもつ意味、および各会堂本来の機能との関係について、最終的な論考をまとめる予定である。
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