研究概要 |
「光クロスリンク法」は,生細胞中で形成されているタンパク質複合体を安定化して単離し,解析することのできる新しい研究手法である.光クロスリンカーを導入する適切な位置は,タンパク質結合ドメインによって異なっていると考えられるので,光クロスリンク法を用いるためには最適な部位の特定が必要となる. 本年度は,まず,当研究チームで使われていたpBpaとTmd-Pheに加え,AzPheとAz-Z-Lysを光クロスリンカーとして実用化することに成功した.そして,すでに複合体の結晶構造が解明されているガンキリンのアンキリンリピートドメインとS6ATPaseについて,結合部位を中心に40箇所程度光クロスリンカーの導入部位を選択し,アンバー・コドン変異体を作製,光クロスリンクの効率を比較した.この結果,それぞれの光クロスリンカーについて効率のよい導入箇所などの知見を集めることができ,光クロスリンク技術の実用性を向上させることができた. また,結合部位が解明されていないRap2-in s teracting protein x (RPIPx)のRUNドメインとRap2Bについて,ドメイン全体にわたって30~40箇所程度クロスリンカーの導入部位を選択し,タンパク質複合体を細胞内で発現させ,光クロスリンクを行って,光クロスリンクがかかる箇所を特定することに成功した.これは,RUNドメインについて最適な光クロスリンカー導入部位を特定し,その知見を収集するとともに,光クロスリンク法を構造未知のタンパク質複合体のタンパク質間相互作用ネットワークの解明に応用できることを示している.
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