研究概要 |
「光クロスリンク法」は,生細胞中で形成されているタンパク質複合体を安定化して単離し,解析することのできる新しい研究手法である.本研究では,光クロスリンク法をタンパク質間相互作用ネットワークの解明に応用することを目的とする.光クロスリンカーを導入する適切な位置は,タンパク質結合ドメインによって異なっていると考えられるので,光クロスリンク法を用いるためには最適な部位の特定が必要となる. 本年度は,ガンキリンのアンキリンリピートドメインとS6 ATPaseについて,前年度に解明した,最も効率よくクロスリンクが生じる位置に光クロスリンカーであるパラベンゾイルフェニルアラニン(pBpa)を導入し,光を照射してタンパク質間に共有結合の架橋を形成させ,ガンキリン・S6タンパク質の架橋複合体をX線結晶構造解析することに成功した.これは,光クロスリンク法がタンパク質間相互作用ネットワークを分子構造のレベルで解明するために有用であることを示している. また,光クロスリンカーをはじめとする非天然型アミノ酸をタンパク質に部位特異的に導入する方法として,「RFゼロ」株を開発した.大腸菌において,7つの必須遺伝子とサプレッサーtRNA遺伝子を導入することで,終止コドンの1つであるUAGを認識する翻訳終結因子RF-1をノックアウトすることが可能となることを見出し,UAGコドンに非天然型アミノ酸をコード化することに成功した.これにより,非天然型アミノ酸をタンパク質の組み込む効率が飛躍的に高まり,また,多数の非天然型を1つのタンパク質に組み込むことも可能になった.
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