本研究は木質構造を対象とした有限要素解析モデルの提案を目的としており、本年度は接合部試験ならびにその有限要素解析を実施した。また、複雑な機構を有する組物の解析や必要に応じて基礎的な材料試験も並行して実施した。 接合部試験については、金物を併用した接合部と貫加工による柱梁仕口の曲げせん断試験を実施した。金物を併用した接合部は在来軸組工法で一般に用いられるドリフトピンを使用したもので、近年研究開発が盛んに行われている木質ラーメン構造に応用されている。貫加工による柱梁仕口の曲げせん断試験では、十字型の柱梁仕口試験体を作成し、接合部に曲げモーメントが作用するように実験を行った。この試験では、木材特有の破壊現象であるめり込みが顕著に見られ、有限要素解析で試みためり込み現象の再現を接合部の挙動で再現できるかどうかを目的としている。 有限要素解析については、まず昨年度実施した腰掛け鎌継ぎの引張試験と追掛大栓継手の曲げせん断試験の解析を実施した。等方性弾塑性モデルで実施した解析では概ね実験結果と良い対応を示し、簡単なモデルに対しては実用的なレベルに十分達していると考えられる。次に、金物を併用した接合部においては、等方性モデルだけでは接合部の非線形挙動を完全に再現することができず、現在は材料非線形を伴った異方性の解析モデルについて試行錯誤を繰り返しながら適切な解析モデルについての検討を行っている。さらに、この解析手法を応用し、伝統的木造建築物に見られる組物を対象とした解析も並行して実施した。多くのパーツによって構成される組物は、木材のめり込みや接触問題といった木質構造を対象とした有限要素解析における様々な問題を含んでおり、このような解析を実施することで解析モデルの妥当性について検討する基礎的な研究内容へとフィードバックしている。
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