魚類の皮膚の防御機構についての理解を深めるため、全ゲノム配列が解読されている唯一の水産重要魚種であるトラフグ(Takufugu rubripes)を供試魚とし、皮膚粘液中に恒常的に分泌されているタンパク質の構造を網羅的に解析した。調べた10数個のスポットのうち、4つについて部分配列を得ることができたが、明確な防御因子の検出には至らなかった。さらにトラフグへの感染能の異なる2種類の魚病細菌を用いて浸漬処理を行い、トラフグ皮膚において発現量が増加するタンパク質の有無を調べた。非感染性のAeromonus salmonicida浸漬群とコントロール群の間に顕著な相違は認められなかったものの、トラフグに感染しうるEdwardsiella tardaを用いた群では、15kDa、44kDaおよび75kDaのスポットの発現量が増加していた。これらの結果は、トラフグが、自己への感染能の有無に応じて、細菌に対する皮膚での防御機構を制御している可能性を示唆している。しかしながらこれらのタンパク質の同定には至らず、今後の課題として残った。
|