本研究の目的は、腎動脈の局所的血行再建が全身病としての動脈硬化性疾患に対する総合的治療戦略の一つとなりうるか否かを明らかにすることである。最新の画像診断技術を駆使し、全身の動脈硬化病変を定性・定量的に評価している。MRIにて動脈硬化症を有する患者の大動脈壁を評価したところ、Time-of-flight法、T1強調画像、T2強調画像において各々特徴的に動脈硬化病変が描出された。さらに、ガドリニウムによる造影と組み合わせることにより、フィブリンに富む被膜と脂質に富むプラークを識別でき、動脈硬化病変の定量的な評価が可能であった。腎動脈狭窄を有する患者においては、同じく動脈硬化症により冠動脈狭窄を有しているが腎動脈狭窄を伴わない患者に比して、より大動脈壁の動脈硬化が高度な傾向を認めた。これが単純に動脈硬化の進行の程度によるものなのか、腎動脈狭窄による血圧や液性因子の変化が大動脈の動脈硬化を促進しているのか、検討を予定している。FDG-PETで大血管の動脈硬化病変を評価することも行っているが、病変検出能力について現在検討段階である。また、動脈硬化を有する患者の末梢血サンプルを用いて各種バイオマーカーに関してELISA法により検討を行った。その結果、腎動脈狭窄を有する患者ではMCP-1の発現が亢進しており、冠動脈狭窄のみ有する患者に比してもより亢進している傾向を認めた。主として白血球における発現を評価しているものと考えている。インターロイキンなどのサイトカインについても現在測定中である。平成21年中に腎動脈狭窄に対するPTRAは5例に対して施行した。それらの症例におけるフォローアップ時の画像所見やバイオマーカーの継時変化について今後検討していく予定である。
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