近年、日本では50-60代男性の前立腺癌患者が増加している。一方、晩婚化が進んだ現代社会において、50代男性の挙児は決して稀ではない。挙児希望の50代男性が前立腺癌に罹患した場合など、治療方法の選択には妊孕性保持の可否が重要となる。しかしながら、前立腺癌に対する妊孕性保持可能な治療方法は未確立である。上述した如く、晩婚化が進んでいる社会事情をふまえると、前立腺放射線療法における精巣への照射線量を明らかにすることは社会的にも重要であり、早急な研究開発が社会的にも要望されている。本研究により、精巣への照射線量を効果的に抑制することができる放射線治療計画が開発されれば、挙児希望する前立腺癌患者に対して、妊孕性を保持した放射線療法が可能となるので、本研究は重要であると考えられる。今年度は、前立腺照射用ファントムの図案を設計し、ファントムを製作した。ファントムのCT画像を取得し、治療計画装置にデータ転送を行った。得られたデータをもとにして、強度変調放射線治療(IMRT)計画を行い、ビーム配置、X線エネルギーの選択、良好な線量分布およびそのパラメータの設定、遮蔽方法について検討した。我々の開発した線量分布では精巣の最大線量は約0.5Gyであり、妊孕性保持可能と考えられた。今後は、得られた強度変調放射線治療(IMRT)計画シミュレーションにしたがって、ファントムに対して放射線照射を行う。ガフクロミックフィルムおよびガフクロミック線量計を用いて、線量を測定する。治療計画結果と線量測定結果とを照合することにより、申請者らが考案した照射方法により精巣線量が抑制され、良好な線量分布が得られることを検証する。
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