研究概要 |
胆道癌14切除症例を対象に上皮内前癌病変及び対応する浸潤巣におけるc-Metの発現様式を免疫染色法を用いて検討したところ、c-metは、腸上皮化生やdysplasiaなどの前癌病変で特異的な、細胞膜への発現を認めた。一方浸潤巣においては発現が消失する症例が14例中10例に観察され、未分化癌や扁平上皮癌などの特殊な組織型を示す領域で、核への発現を認めた。 浸潤巣における発現消失は、乳癌など他臓器癌における発現様式と逆であり、c-Metの臓器特異性を示唆する所見であった。 さらに、胆管がんにおける検討で、c-metの腸上皮化生におけるdiffuseな発現が認められたことから、発癌シグナルの下流としてのみでなく、形態形成への関与が強く示唆された。腸型・胃型などの、消化管形態形成が関与する膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)症例5例、通常膵癌15例を用い、c-metを含む様々なマーカーを免疫染色にて検討したところ、c-metはMUC2や、Claudin-18など、腸型IPMNのマーカーと同様に近い発現様式を示した。浸潤部で発現の強いp53や細胞密度の高い領域で発現するKi67,膵胆管型の形態を示す領域のみで発現するGli-1などとは明らかに発現様式が異なっていた。 本結果は、Anticancer Research 2010, Julにin pressである。C-metと各種腸型マーカーとの関連は、今後胆膵腫瘍のみならず、各種消化管腫瘍検体を用い継続して検討する予定である。
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