研究概要 |
I. 目的 2003年の山陽新幹線居眠り運転事故以来,「睡眠時無呼吸症候群」に対する社会的認識が高まり始め,検査・治療が積極的に勧められるようになってきた.睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病を高頻度で合併するといわれている.潜在患者数は人口の2%約200万人といわれているにもかかわらず,現在治療中の患者数は13万人といまだ少ない.つまり,本疾患の検査に訪れる患者以外にも,検査を必要とする患者が潜んでいる可能性が高いと考えられる.今回は歯科治療を目的として受診した患者に対してアンケートを行い潜在患者の存在について検討した. II. 方法 対象者は歯科治療を目的として受診した患者23名とした.調査の趣旨を説明し,承諾を得た患者に対してアンケートを実施した. また,マランパティスコアを用いて舌および扁桃の大きさについて評価を行った.このスコアが高い値であるほど睡眠時無呼吸症候群の診査に有意であるとされている. III. 結果と考察 調査対象者はいずれも歯科治療を目的として受診した患者であるが,すでに「睡眠時無呼吸症候群」の診断を受けている者が1名含まれており,その他にも眠気の評価で高い値を示した者が3名いた.また無呼吸リスクの評価でハイリスクを示した者も3名おり,うち2名は眠気の評価が高値である者と一致していた. マランパティスコアはスコアがIIIを示したものが10名,IVを示したものが1名認められ,IIIには前評価で高値を示した3名が含まれており,IVであった者はすでに睡眠時無呼吸症候群の診断を受けていた患者であった. 今回の結果から,歯科受診患者に潜在する睡眠時無呼吸症候群患者の可能性は高いと予測され,さらなる社会的認識の向上のために,アンケートや今回用いたマランパティスコアなどの方法を理解しておくことは有用であると思われる.このような活動が医歯学連携の一歩にも繋がると考える.
|