本研究の目的は、地域において行政保健師が行う生活習慣病予防活動の質的評価について、以下の点から追究することである。第一に、生活習慣病予防活動の成果とコミュニティエンパワメントの関連を明らかにし、コミュニティエンパワメントの視点を用いた生活習慣病予防活動の評価指標を考案する。第二に、作成した評価指標案を用いて生活習慣病予防プログラムを展開し、その有効性を検証し、実用化可能な生活習慣病予防活動の評価指標を開発する。 平成21年度は、文献調査を実施した。コミュニティエンパワメントに関する文献資料を収集し、先行研究を参考にコミュニティエンパワメントの構成要素を整理し、次いで、生活習慣病予防に関する保健師の実践活動事例が掲載されている文献資料から、活動の成果を調べた。この結果をもとに、現在、コミュニティエンパワメントの視点を用いた生活習慣病予防活動の評価指標の枠組みを作成中である。また行政保健師が行う生活習慣病予防活動について情報収集を実施した。収集した活動事例中の2つの活動事例を対象に、活動の成果、評価方法を検討した。対象とした活動事例は、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを組み合わせて、個人の変化と共に、地域への波及効果を意図的にねらっている活動であった。個人の変化は、個人の生活習慣改善だけでなく、生活習慣病予防が仲間や地域の問題であることを認識するようになること等、個人が地域に目を向けるようになることも含まれた。保健師は、個人と地域全体、両者への効果を意識して活動を展開し、評価においてもこの視点を意識的に組み込むことが重要であると考えられた。
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