この研究は、東洋酸素事件をとりあげて、当該紛争が長期化・大規模化した背景を明らかにすることにより、整理解雇をめぐる経営社会政策を考察することをねらいとする研究である。東洋酸素事件は、整理解雇をめぐる裁判として最も有名な事件である。 解雇紛争の行方は解雇発生以前の労使関係の成熟度に規定される。つまり、解雇の前から労働条件等について、労働者が集団で使用者側に異を唱えるということができる程度に、労使が成熟していたかどうかに規定されがちである。ただ、この事件では紛争の収束に、新経営者の力量が大きく寄与していた。そこで、整理解雇をめぐる経営者職能を考察した。
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