研究概要 |
(1)縦断調査では,大学病院に通院する妊娠21週までの妊婦193名から研究協力を得た.このうち95名が就労しており,回答に欠損のあった15名を除き,80名を分析対象者とした(初回調査時平均年齢:34.9歳,平均妊娠週数:16週,事務職:46.3%・専門職:27.7%・販売職:10%・その他:16%).このうち10名が,妊娠末期(平均35.5週)の調査までに退職していた. (2)フォーカスグループインタビューでは,助産院に通院する妊婦10名(平均34.2歳,平均35.7週)を4グループに分類し,各グループ1時間で1~5名を対象に妊娠中の就労の困難さ,継続に影響する事柄を尋ねた. 2つの調査から,妊娠中の退職に影響する要因として(1)子育て・母親業に専念するといった本人の考え,(2)切迫流・早産や低位胎盤(3)つわりといった妊娠に伴う症状,(3)非協力的な職場環境(4)不十分な制度などの労働環境が明らかになった. 妊娠期の就労の困難さは,物忘れ,眠気,立ち仕事による腰痛などの「妊娠に伴う身体症状による仕事遂行の困難」と,定時に昼食を摂取できない,休息できないなどの「労働状況による妊娠継続や胎児への不安」があり,就労女性は妊娠中の体への配慮と,仕事場に迷惑をかけないために,「職位を下げる」「支援を求める」といった方法で就労を継続し安全に妊娠期を過ごすための方策をとっていた. また,継続する理由として,「仕事への遣り甲斐」「他者とのつながり」があり,これらは,ストレスなく育児を行う上で必要な要件と捉えていた.妊娠・育児期に就労を継続できる理由には,「上司の,妊娠の知識と理解」「就労するための保育環境」が影響していた. 以上から,仕事と妊娠の両立のためには,上司の,妊娠の知識と理解を促し,職場の制度だけでなく母児のために必要な栄養摂取や休息の配慮などの労働環境を整え,妊婦自身が他者に支援を求める必要性を明らかにした.
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