研究課題/領域番号 |
21H00627
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小口 高 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (80221852)
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研究分担者 |
井田 仁康 筑波大学, 人間系, 教授 (20203086)
早川 裕弌 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70549443)
瀬戸 寿一 駒澤大学, 文学部, 准教授 (80454502)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自然地理 / 教育 / 地形 / 防災 / デジタル教材 |
研究実績の概要 |
地理情報科学・地理学・地図学分野でデジタルデータを扱った教科書・教材について、国際比較を行った。近年、地理空間情報に関する記述が増加しており,災害分野における地理空間情報の有効性を指摘した箇所も増えている。しかし、防災に特化した章は日本以外では設けられることが少ない傾向が判明した。これは、米国で開発が進められている「GIS&T Body of Knowledge」の新版でも同様であることが明らかとなった。一方、日本で出版された小学校、中学校、高等学校における防災教育の実践の文献および教科書を用いて、防災教育の近年の動向を調査し、社会科教育、自然地理を含む地理教育、防災教育の違いや接点などを整理した。このような教育の動向に関する検討の成果を、国内学会とともにGLP(Global Land Progamme)アジア大会などの国際学会で発表し、国際的な展開のための議論を深めた。 日本と中国の中高生を対象に、デジタルと紙のハザードマップを共に用いた実践授業を行い、アンケート調査に基づいて二種類のハザードマップの教育効果を比較した検討の結果をまとめ、国際誌に投稿して受理された。 地理教育に新技術を導入する検討も行った。主に関東・中部地方で自然地理景観の現地調査を行い、ドローンを用いて360度パノラマ空撮画像などを取得して地形学習のオンライン教材を実装し、高校生を対象に実践授業を行った。3Dプリンタを導入し、オンライン教材とは異なる手元で利用できる教材として、地形の3Dモデルを用いるワークフローを検討した。田谷の洞窟(横浜市戸塚区)とその周辺域を対象に、洞窟および里山環境の地表・地下を統合する3次元地理情報を取得し、自然地理・防災教育のための教材として整備を進めた。それを活用し、当該地域の小学校や高等学校において、自然地理や防災、地理情報科学に関する実践授業を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により、予算の消化が予定通りに出来ず、一部を翌年度に繰り越すことになったが、研究の内容としては複数の試みを行い、いずれも一定の成果を上げ、論文の公表や学会発表も行ったので、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
国内と国外におけるGIS、自然地理、防災に関する教育の事例に関するレビューの結果を踏まえて、一部を構築した教材の本格的な整備を進める。防災に関する検討が相対に進んでいる状況を踏まえて、地形を主体とする自然地理学一般に関する教材の構築も進めるように意識する。この際には、これまで整備した扇状地などの主要な地形の特色と地形パノラマ画像に関するオンライン教材を、量・質ともに充実させるとともに、地形をGISで扱う際に利用されるDEM(デジタル標高モデル)の特色や利用方法を学ぶ教材も整備する。また、流体による現象であるために、地形に比べて具体的な教材の構築が難しい面がある気候と水文についても、地形と関連付けたりして教材の構築を試みる。防災面では、これまで整備した洪水に関する教材とともに、土砂災害や火山災害などに関する教材を構築する作業について、検討を進める。さらに、教材の多言語化と、それを踏まえた国外における実践についても検討を進める。
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