研究課題/領域番号 |
21H00679
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
荒井 紀一郎 中央大学, 総合政策学部, 教授 (80548157)
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研究分担者 |
肥前 洋一 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (10344459)
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (10582041)
森川 想 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10736226)
河合 晃一 金沢大学, 法学系, 准教授 (50746550)
関 智弘 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (60796192)
大西 裕 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90254375)
三橋 平 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90332551)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 行政組織研究 / 実験政治学 / 組織内コミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、行政組織のパフォーマンスが向上する条件とそのメカニズムについて、組織構造、タスク、そして構成員間におけるコミュニケーションに着目して解明することにある。2022年度は、昨年度実施した実験結果の解析作業を進めつつ、並行して新たな実験を設計、実施した。この実験は、ニュースベンダーゲーム実験から着想を得て、部下の能力に不確実性がある状況において上司がどのように仕事を割り振るかを観察するものである。実験の結果、平均より高いあるいは低い収益が期待される際に、上司は採用するべき最適値も理論的には平均から離れるはずだが、この実験において上司役の被験者の選択は平均に引っ張られることが明らかになった(pull-to-center効果)。また、実験自体はセッション毎に独立した意思決定をおこなう設定だが、被験者の選択は過去の経験に大きく影響されるということも明らかになった。部下の能力に対して不確実性が大きい状況では、多くの仕事を割り振れば高い収益が見込めるにもかかわらず、上司は最適な仕事量を割り振ることができず、割り振る仕事量が平均に落ち着いてしまうという結果は、上司と部下との間のコミュニケーションの重要性を示唆するものであり、翌年度は上司とのコミュニケーションが部下の職務の選択に与える効果について検証していくこととなった。研究成果は、International Association of Schools and Institutes of Administrationで報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年12月に実施したプレ実験のデータを分析したところ、当初の想定に反し、被験者がそれぞれに割り当てられる実験処置について、認知的な差が生じていないことが判明した。研究遂行上、被験者が自分に割り当てられたタスクや実験処置を正確に認識した上で実験を実施することが不可欠なため、プレ実験で得られたデータを延長して分析し、本実験でのデザインや設計を修正した上で実施する必要が生じた結果、約2ヶ月ほど計画から遅れがでている。
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今後の研究の推進方策 |
上司による部下への仕事割り振り実験では、上司と部下との間のコミュニケーションが組織のパフォーマンスを高めるための極めて重要な要素であることが示唆された。この知見を活かすため、上司とのコミュニケーションの有無によって、部下側の仕事の選択にどのような差異が見いだされるのかを新たな実験によって検証する。この実験については、実験結果の妥当性を確認するために日本と海外の公務員を対象に実施する計画である。現時点では、研究分担者の森川がスリランカの公務員とその公務員の下で働いている技術者を対象とした実験を担当し、荒井を中心に日本の公務員を対象とした実験を実施する予定である。また、研究計画最終年度となるため、これまでの研究成果を整理、総括した上で学会での報告や学術誌への投稿を進めていく。
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