研究課題
基盤研究(B)
一般の距離空間上への拡散過程(Dirichlet form)の構成の問題に対して、空間の分割を用いて空間を近似するグラフの列を与え、そのグラフの列の上の離散的なDirichlet形式のスケーリング極限で空間の局所正則なDirichlet formを構成するというアプローチを行った。そして、Barlow-BassがSierpinski carpet上にBronian motionを構成する際に見出したKnight move条件を一般化したものが、このアプローチが成功するための十分条件であることを明らかにした。更に、その条件を満たす新しい自己相似集合のクラスを見出した。
複雑な空間上の解析学
マンデルプローによって自然界の物体の適切なモデルとして提案されたフラクタル上では、その複雑な形状により通常の微分を基本とする解析学は適用できない。従って、自然界のモデルとしてのこのような複雑な空間で、物理現象を記述するためには、新しい解析学の理論が必要となる。本研究は、複雑な空間の幾何と解析の係わりの研究を通じて、複雑な空間上の拡散現象や波動現象を記述するための基本理論を確立し、さらに複雑な空間と従来の滑らかな空間上の物理現象の本質的な違いを明らかにすることに貢献している。