研究課題/領域番号 |
21H01017
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
毛利 真一郎 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60516037)
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研究分担者 |
荒木 努 立命館大学, 理工学部, 教授 (20312126)
藤井 高志 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (60571685)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | モアレ超格子 / 原子層材料 / グラフェン / MoS2 |
研究実績の概要 |
ラマン分光を用いてさまざまな積層角度を有する原子層モアレ超格子系の熱伝導度測定を行った。積層角度の低い試料で熱伝導度が高く、積層角度が大きくなるにつれて熱伝導度が増加することを見出しており、日本物理学会でポスター発表した。この研究は、学生優秀発表賞を受賞した。特に、転写に用いるPMMAの除去が散乱に大きな影響を及ぼすことがわかってきたため、試料準備の部分で様々な工夫を行い、理想的なデータを得ることが可能になってきた。 また、さまざまな架橋ツイスト2層グラフェンのフォノン物性を調べ、Gモードと2Dモードの相関関係を調べた。Gモードと2Dモードの比、ピーク位置を詳細に調べることで積層角度を絞り込むことが可能であることがわかってきた。また、2層グラフェンに金属を蒸着したサンプルでは、Gモードと2Dモードが大きく低波数側にシフトしており、フォノン分散が制御できる可能性があることを示すpreliminaryな結果を得ることができた。 さらに、多波長でのラマン測定や、温度依存性の測定のために、自作ラマン装置の光学系の改良も行った。 この他THz波を利用したグラフェン物性の評価も進めており、THzエリプソメトリによってサファイア上に転写したグラフェンの電気特性を測定可能であることも見だした。サファイア上では、グラフェンの移動度が低くなっているが、これが粒界に起因する可能性が高いことがわかってきた。 関連研究で、学会発表を14件(うち国際学会発表2件)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多波長でのラマン測定や、温度依存性の測定のために、自作ラマン装置の光学系の改良も行ったが、装置の移設が必要であり、その作業に想定より長い時間を費やした。 また、単純な熱伝導度の角度依存性に関しては、フォノン物性解明には不十分な内容であるが、すでに、競合グループから1本先行論文が出版されており、その結果も踏まえたうえで、目的とするフォノン分散の温度依存性などのデータを取る必要がでてきた。そのために、試料の質を上げることと、より積層角度の小さな領域での実験を進める必要があり、その準備に時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、10°以下の積層角度を持つ試料に対してラマン分光を利用した熱伝導計測を行う。この領域は、わずかな積層角度の変化でも大きくフォノン分散が変化することが知られており、その熱伝導への影響を評価する。 さらに、多波長でのラマン分光や入射角度をつけたラマン分光を利用したフォノン分散の推定や、温度変化測定を利用したフォノン緩和メカニズムの解明などの研究も進める。温度の高い高温領域でのフォノン物性にも注目し、熱放射特性とのクロスオーバー領域でフォノン挙動が積層角度でどう変化するかも明らかにしていきたい。
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