研究課題
本研究では、MoS2やグラフェンなどの原子層材料を2層ツイストして架橋させた、「架橋モアレ超格子系」を対象に、モアレ超格子の形成や周期がフォノン物性にどのような影響を与えるかを評価することが目的であった。 試料を架橋させることで、基板の影響を排除した上で熱物性の評価が可能となる点が、他の方法にない特色である。本年度は、2021年度に行った架橋ツイスト2層グラフェンの角度依存性の結果について、再解析を行い。温度による熱伝導度の変化を含めた解析結果をまとめた(「応用物理2024年3月号」。積層角度が小さいほど熱伝導度が小さくなる結果が得られている。また、グラフェン同士やh-BNとグラフェンのツイスト2層系において、ラマン分光でフォノン物性を調べ、熱伝導を調べた。TEM観察で決定したツイスト角度のデータをもとに、熱伝導度にツイスト角度依存性があることを見出した(兒玉他 電子材料シンポジウム)。金属蒸着による架橋ツイスト2層グラフェンのラマンシフトについては、G/2D比をもとに積層角度を推定し、蒸着によるラマンシフトの積層角度依存性を調べた。その結果、積層角度によってラマンシフトに違いがみられることがわかってきた。積層角度が低い領域では、もともと試料に引っ張りひずみが入っており、それが蒸着により緩和される。一方で、積層角度の中程度の資料では、単純に蒸着による曲率の変化が引っ張りひずみをもたらし、G,2Dピークともラマンシフトが低波数側にシフトする。 さらに、30°に近い積層角度では、ひずみの変化に加え電子状態の変化があることを示唆する結果となっている。上記研究に加え、大面積のMoS2やグラフェンの結晶成長に関する研究や分極材料によるドーピング効果でフォノン物性を含む光物性がどう変化するかの実験も行った。これらの研究も含め、論文発表2件、学会発表22件の成果を得ている。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 7件)
ACS Nano
巻: 18 ページ: 2455-2463
10.1021/acsnano.3c11099
応用物理
巻: 93 ページ: 174-177
10.11470/oubutsu.93.3_174