研究課題/領域番号 |
21H01336
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
前橋 兼三 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40229323)
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研究分担者 |
生田 昂 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80805929)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウイルス / グラフェン / 電子素子 / モニタリング |
研究実績の概要 |
本研究では、室内等の大気中に浮遊するウイルスを特異的にその場でセンシングすることを目的として、「グラフェンをチャネルとした電子素子を作製し、そのグラフェンチャネル表面上に設計した1本鎖DNAを化学修飾することにより、大気中に浮遊するウイルスを特異的に認識し、電気的にセンシングする」ことである。 2021年度は、熱化学気相法により合成した高品質単層グラフェンを合成する条件を確立した。銅フォイルの表面処理を変化させ核形成密度を減少させることにより、グレインサイズの大きいグラフェンを合成することに成功した。また、得られたデバイスの電気的特性評価を行い、核形成密度が小さいほど、高移動度を有するデバイスが得られることを明らかにした。 次に、インフルエンザウイルスのスパイクタンパク質であるヘマグルチニンの液相中での検出を、グラフェン電界効果トランジスタを用いて行った。まず、Enzyme-linked oligonucl eotide assay(ELONA)法を用いて、様々な塩基配列を有すDNAアプタマーのヘモグルチニンに対する結合能を評価した。その後、ELONA法から得られた高い結合能を示したDNAアプタマーをグラフェンチャネル上に修飾し、ヘマグルチニンの検出を行った。その結果、DNAの配列により、ヘモグルチニンの検出感度が向上することが明らかになった。さらに、ヘモグルチニンを含んだ溶液をグラフェンチャネル上に垂らし、大気中でヘモグルチニンが検出可能であることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAの配列を変化させ、ヘモグルチニンをグラフェン電界効果トランジスタを用いて溶液中で検出を行ってきた。その結果、DNAの配列によって、検出感度が変化することが分かった。そのため、おおむね順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、溶液中のカチオンの濃度、種類を変化させた場合に、DNAの構造がどのように変化するのかを測定する。また、その構造変化がヘモグルチニンの検出感度にどのように影響を与えるのかを調べる。次に、リガンドを導入し、カチオンが存在しない状況においても、DNAが3次元構造を有するかを調べ、その構造がヘモグルチニンの検出感度に与える影響を調べる。さらに、上記の条件で得られたDNA構造を用いて、大気中でのヘマグルチニンの検出を試みる。DNAを溶液中に溶かし、カチオン、または、リガンドを加え、その溶液をグラフェン上に垂らすことにより、DNAをグラフェン上に固定する。ヘモグルチニンを含んだ溶液を大気中で噴霧することにより、大気中でヘモグルチニンを検出可能か調べる。さらに、カチオン、リガンドの濃度がどのようにヘモグルチニンの検出感度に影響を与えるのかを調べる。
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