研究課題/領域番号 |
21H01364
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
劉 小晰 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (10372509)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スピントロニクス / トポロジカルスピンテクスチャ / トポロジカルスピンメモリー / トポロジカルスピン論理素子 / トポロジカルスピンニューラルネットワーク / トポロジカルスピン量子ビット |
研究実績の概要 |
本年度では、磁気スキルミオンのナノ構造中に駆動、制御、安定性に関して多方面で研究展開し、実験的には、磁気スキルミオンの新規な安定化方法の提案及び実証実験、ナノ構造中の磁気スキルミオンの電界による反転制御を行った。理論的には反強磁性薄膜中の磁気スキルミオンの駆動方法、トポロジカルスピンテクスチャに基づく論理素子の具体的な構造を提案した。特に、次世代人工知能(AI)の基礎であるオートマトンを磁気スキルミオンで実現しようと試みた。 磁気スキルミオンをメモリー・論理素子への応用のため、事前に設計した回路に従って駆動させるのが極めて重要である。しかしながら、磁気スキルミオンホール効果の影響で、磁気スキルミオンが駆動中に回路の側と衝突して情報を失われる可能性が高い。本年度では、磁性多層膜の局所領域の磁気異方性の制御によって、磁気スキルミオン障壁の形成が成功した。この磁気スキルミオン障壁の特徴として、磁気スキルミオンが近付けると反発力を受ける。そのため、磁気スキルミオンが回路の側から保護され、事前に設計した回路内に安定に移動することができる。この結果はNano Letters 21 (10), 4320-4326(2021)に掲載された。 オートマトンは、入力と状態遷移制御が与えられた場合にその動作をトレースできる人工知能の基礎である。ここでは、磁気スキルミオンを画素のように制御する方法を提案し、その動作制御による状態遷移をシミュレーションで確認した。すなわち、磁気スキルミオン・オートマトンの可能性を確認でき、トポロジカルスピンテクスチャのAIへの応用を広げた。この結果はCommunications Physics 4 (1), 1-9 (2021)に掲載された。 本年度では、本研究の関連成果を学術論文誌に論文9本が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では、磁気スキルミオンの安定性、駆動方法、ナノ構造中のトポロジカルスピンテクスチャの理論並びに実験を多方面で展開した。三次元トポロジカルスピンテクスチャ(磁気スキルミオン・チューブなど)の電流、電界駆動、反強磁性磁気スキルミオン、トポロジカルスピンテクスチャに基づく論理素子及びその動作特性に関して、多数の研究成果を得られた。研究の成果がNano letters, Communications Physics, Physical Review B, Applied Physics Lettersなど学術論文誌に論文9本が掲載された。Google Scholarの論文の引用状況を確認したところ、2021年度掲載された論文がすでに100回以上に引用され、学術性を確認できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度において、トポロジカルスピンテクスチャのスピン構造と物性の関係をさらに検討し、トポロジカルスピンテクスチャとスピン流、電圧、光、スピン波など多数な物理量と相互作用を検討し、ポロジカルスピンテクスチャのスピン構造と磁性薄膜の物質、結晶構造、ナノ構造などの関係を明らかにする。特に、応用を見据えトポロジカルスピンテクスチャのスピン構造と電界の関係を理論並びに実験を通じて解明し、低消費電力・高速演算メモリーへの応用の基盤を構築する。研究室所有の光ピンセットや磁気光学カー顕微鏡を用いて、マイナス20℃から200℃までの各種トポロジカルスピンテクスチャの特性の温度依存性を明らかにする。これによって、トポロジカルスピンテクスチャの不揮発性を確認し、高速論理演算への応用の基盤を構築する。
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