現在我々は、複数の無機炭素材料を積層複合化し様々な炭素界面構造を作り出す事で新機能・物性を発現させる試み、具体的には、グラフェン(sp2炭素)とダイヤモンド(sp3炭素)の積層界面(炭素sp2- sp3界面)で新機能・物性を発現させる試みを行っているが、近年我々は、垂直配向グラフェン(VG)/ダイヤモンド半導体接合で脳機能類似の光検出・記憶機能が現れる事を初めて見出した。本研究では、このVG/ダイヤ接合で現れる脳類似光記憶機能を用いた新規AIエレクロニクスデバイスの開発を進めてきた。 昨年度はVG/ダイヤ接合を用いた新規脳型イメージセンサ(脳類似光検出-記憶デバイス)の開発を行ったが、今年度はこの素子の高性能化に加えて、VG/ダイヤモンド接合を用いた新規画像認識デバイスの作製を試みた。 VG及びダイヤモンド半導体の薄膜成長条件を精密制御する事で、光記憶時間の制御が行える事が分かった。特に光記憶時間の短いVG/ダイヤ接合の特異なパルス光応答特性を用いる事で、画像認識(数字(0~9)画像の識別)が行える事が明らかとなった。各数字のバイナリ(二値)パターンに対応したパルス光を接合に照射する事で得られる光伝導度値が数字毎に異なる事を利用して、高精度画像識別が可能となった(識別精度:20バイナリパターン:~92%、784バイナリパターン(→ 64バイナリパターンに縮約):~80%、)。結果として、VG/ダイヤ接合の新機能である画像認識機能が見出される事となった。今後はより複雑なパターンの高速・高精度認識を行うと共に、移動物体の検出や行動認識・予測等を目指していく。また、これらの結果を基にした新規高性能AIデバイス開発に関する予算申請が科研費基盤Bに採択された(2024-2026年度)ので、本研究成果を基に研究を益々発展させていきたい。
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