研究課題
優れた素質を持つ高温超伝導材料を多結晶形態で応用することを目指し、新規プロセスの基礎開発を目的として研究を進めた。初年度は、ヘリウム温度(4.2 K)よりも高温での応用が可能な超伝導材料として注目されているMgB2の合成プロセスを主に検討した。超伝導バルクとしての応用を考えた場合、MgB2は粒界弱結合の影響がなく、無配向多結晶体であっても巨視的な超伝導電流を得やすいため、多結晶形態のバルクに高磁場を捕捉することが期待できるが、従来の合成プロセスでは反応時に空隙や不純物が生じることが課題となっていた。そこで本研究では、ホウ素源ペレットにマグネシウムの金属蒸気を輸送し、高充填率なMgB2バルクを得るマグネシウム気相輸送(MVT)法に取り組んだ。反応条件を系統的に変化させて試作したMVT法バルクを評価したところ、従来の合成プロセスと比較して約2倍の超伝導電流密度が得られた。一方で、走査型電子顕微鏡により微細組織を観察したところ、マグネシウム蒸気とホウ素源ペレットとの反応時に、バルク内に組織欠陥が発生するケースもみられ、化学反応にともなって局所歪が生じている可能性が示唆された。MVT法バルクの組織制御に向けて、反応時の歪生成メカニズムの理解とともに、反応前駆体となるホウ素源ペレットの特性が与える影響についての検討に着手した。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記載の実績が得られており、おおむね研究計画に沿って順調に進捗しているため。
研究計画に沿って研究を推進する。次年度は微細組織、反応時の歪生成についての検討を重点的に進める。
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