研究課題
YAGレーザー(355 nm)システムを用いて、ホウ素ドープQカーボン超伝導体の作製に取り組んだ。試料作製には申請者が開発した調節パルスレーザーアニール(PLA)法を用いた。この方法ではPLA時における超過冷却および超急冷を原料膜内のsp3量の(熱伝導)と照射レーザーのエネルギー密度の組み合わせにより調節できる。本研究ではサファイア基板上にパルスレーザー堆積法により作製したsp3量50%-70%のホウ素/炭素膜(ホウ素量は10%-20%)に対して、パルスレーザーをレーザー出力密度0.5-0.8 J/cm2の範囲で1パルス照射して、ホウ素ドープQカーボンの作製を試みた。その結果、PLAによって、室温における膜の電気抵抗率は3桁近く減少した。PLA後の膜について電気抵抗率の温度依存性を調べると、40 K付近から電気抵抗率が減少する様子が見られ、また、帯磁率の温度依存性からは、40 K付近から磁化の減少が観測された。超伝導の発現を示唆する結果を得た。放射光光電子分光により電子状態を調べると、PLA後の膜ではホウ素が炭素を置換し、また、フェルミ準位上に状態が出現していることが分かった。PLAによりホウ素がドープされ、その結果金属化している。第一原理分子動力学計算からは、アモルファス炭素にホウ素ドープを行うと、ホウ素はアクセプターとして働き、系はp型半導体としてふるまうことが分かった。この結果は高濃度ホウ素ドープが金属化への指針であることを示しており、実験結果は計算による指針の正しさを実証したものとなっている。本研究から、高濃度ホウ素ドープQカーボン超伝導体の実現は可能であることがわかった。このことは、アモルファス炭素の高温超伝導実現に向けた重要な出発点を与える。また、本研究はまた、調節PLA法が非平衡プロセスの制御およびホウ素ドープQカーボン超伝導体の作製に有効であることも示した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Diamond and Related Materials
巻: 143 ページ: 110894~110894
10.1016/j.diamond.2024.110894
Thin Solid Films
巻: 769 ページ: 139749~139749
10.1016/j.tsf.2023.139749
巻: 140 ページ: 110514~110514
10.1016/j.diamond.2023.110514
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 62 ページ: 125001~125001
10.35848/1347-4065/ad079b
Journal of Applied Physics
巻: 134 ページ: 245302~245302
10.1063/5.0176810
https:// film.rlss.okayama-u.ac.jp/index.html