研究課題/領域番号 |
21H01631
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
大津 直史 北見工業大学, 工学部, 教授 (10400409)
|
研究分担者 |
太田 信 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (20400418)
坂入 正敏 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50280847)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 超弾性NiTi合金 / TiO2皮膜 / 陽極酸化処理 / 生体適合性 / 耐食性 / 細胞培養試験 |
研究実績の概要 |
2年目となる当該年度は、まず前年度の研究成果を基に、陽極酸化処理で超弾性ニッケルチタン合金表面に、生体適合性を向上できる皮膜を形成する「至適条件」を絞り込みをおこなった。 まず前年度の研究成果より、超弾性ニッケルチタン合金表面に、ニッケル溶出の抑制を期待できる皮膜を形成するには「下限電圧をゼロ・ボルトとした方形パルス電圧を印加する事が良い」という結果を踏まえて、電圧印加条件はこれに固定した。その上で、硝酸、硝酸アンモニウム、硫酸、硫酸アンモニウムの4種の電解液を選択して、これら電解液で形成した陽極酸化皮膜の表面特性を調べた。その結果、ニッケル溶出に関しては、全ての溶液で、未処理合金と比較して溶出量の低下が確認できるが、その中でも、硫酸アンモニウムおよび硫酸が抑制効果が顕著であることがわかった。 次に、これら4種の電解液で陽極酸化処理した合金の表面にて、ヒト血管内皮細胞株(EA.hy926)を培養し、細胞の接着性および増殖性を調べた。さらには超弾性ニッケルチタン合金を血管ステントとして用いる時の欠点であるステント血栓症の抑制につながるキー・イベントである「内皮化」を、細胞培養でシュミレーションする技術について検討をおこなった。細胞増殖率は、ニッケル溶出と相関があり、硫酸および硫酸アンモニウムで処理した表面上で、未処理表面と比較して高い増殖率を示した。然るに、硫酸で処理した表面はミクロンレベルの凹凸があり、そのことが要因で細胞接着率に劣る結果となった。 以上の結果から、初年度の研究成果で得た電圧印加条件を用いて、硫酸アンモニウムを電解液として陽極酸化処理する事で、生体適合性の高い皮膜を形成できるという結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の当初目標としては、細胞培養実験を用いて「内皮化」の速度を検討する予定であったが、実際には、その手法を確立するだけに留まり、実際の試料の対して、これらの実験を実施することができなかった。その遅れの分を考慮して、やや遅れている状況にあると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる次年度は、まずは今年度の遅れてあった「内皮化」の速度を、細胞培養試験で見積もる実験をおこなう。その手法は今年度の研究で確立できているので、これを用いて実験検討をおこなう。さらに、血管ステントを模した「流れのある環境」での細胞実験をおこない、本技術が、血管ステント用ニッケルチタン合金の安全性を高める表面処理として活用できるか見極める。
|