研究成果の概要 |
シリカガラスの光学的透明性は,溶融温度で高圧圧縮することによって著しく向上する. 本研究を行う前までは圧力の範囲が0.2GPaまでしか実験的に検討されていなかった.本研究ではこの圧力範囲を0.98GPaまで広げ,レイリー散乱以外に,密度,屈折率,高エネルギーX線散乱,熱伝導率,膨張係数などのさまざまな物性測定に成功した.その結果,高圧凍結シリカガラスでは密度や屈折率は高圧ほど単調増加するが0.8GPa付近で構造揺らぎとレイリー散乱が極小値となることがわかった.分子動力学シミュレーションを元にした計算でX線散乱の構造因子がよく再現された.散乱を抑制するガラス構造のモデル化に成功した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
人工知能とセンシングによるスマート社会が大きく発展している.端末やデータセンタ間を往来する通信容量は急増し,エキサバイトを優に超えている.また,安全な通信を保証する量子暗号は原理的に増幅できないため,長距離通信に適用するためには超透明通信媒体が必須となる.本研究で目的とし,明らかにした超透明シリカガラスの広範囲の圧力依存性は,これらの課題を解決する超透明シリカガラスコアファイバを実現するための材料開発の工程で欠かすことのできない社会的な意義の大きいものである.ガラスの光散乱損失が0.8 GPa付近で極小になり,この時の原子構造が明確化されたことでファイバ化で目指すべき構造が明らかとなった.
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