研究課題/領域番号 |
21H01863
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡辺 幸信 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (30210959)
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研究分担者 |
川瀬 頌一郎 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (10817133)
中山 梓介 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (30758610)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 陽子・中性子核反応 / 軽イオン生成 / nTD-Si検出器 / パルス波形粒子識別 / 核反応モデル |
研究実績の概要 |
(1) 平滑化手法に着目したデータ解析手法の改良 低エネルギーイオンの粒子識別を可能とするため、波形データからノイズを除去するための平滑化パラメータ及び手法の詳細検討を行った。平滑化スプライン補間を適用することで、前年度の結果(平滑化に移動平均法を適用)に比べ、より低いエネルギー(2MeV付近)の陽子、重陽子、三重陽子の粒子識別に成功した。 (2) ΔE-Eカウンターテレスコープ検出器の性能テスト実験 通常のSi検出器とCsI検出器を組み合わせたΔE-Eカウンターテレスコープ検出器の性能試験を実施した。この検出器は、nTD-Si検出器で測定可能な粒子のエネルギーより高いエネルギー領域のデータ取得に使用する。九州大学加速器・ビーム応用科学研究センターのタンデム加速器施設にて、Al標的にLi-7ビームを入射して核反応で放出される荷電粒子(陽子、重陽子、三重陽子、α粒子)を測定した。その結果、良好な粒子識別ができ、それぞれの荷電粒子のエネルギースペクトルを導出することができた。また、nTD-Si検出器のみで測定した低エネルギー領域のエネルギースペクトルとデータ欠損なく、接続可能であることも示せた。 (3)理論モデル計算コードの予備解析 離散準位の粒子崩壊を考慮できるCCONEを用いて、炭素に対する14,18MeV陽子入射反応の放出陽子及びα粒子のDDXを計算し、先行研究の実験データと比較した。粒子崩壊を考慮することで実験値の再現性が大きく向上した。さらに、順次崩壊過程に寄与する励起エネルギー準位を増やすことで、先行研究では過小評価になっていたα粒子の放出エネルギー領域でDDX計算の予測精度が向上することを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画していた研究項目をほぼ終了でき、広範なエネルギー領域をカバーする軽イオン計測システム開発をほぼ終えることができた。しかしながら、中性子入射反応についてはウプサラ大との共同研究として実施する予定であったが、フランスGNAIL研究所での国際共同実験に参加はできていない。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 軽イオン生成核反応データの取得 昨年度性能評価試験を実施したカウンターテレスコープを用いて、九州大学加速器・ビーム応用科学研究センターのタンデム加速器施設を利用した陽子入射軽イオン生成DDXデータ測定を実施する。汎用大型散乱槽内に検出器を複数台配置し、同時測定してDDXデータを取得する。標的として、本年度は主要な生体構成元素である炭素と半導体構成元素のシリコン(あるいは、隣接元素のアルミニウム)の薄膜標的を選択する。入射エネルギーはタンデム加速器で発生可能な14MeVを予定している。昨年度までに開発したパルス波形粒子識別法を適用し、生成イオンを識別して測定角度毎のエネルギースペクトルを求める。得られた結果に基づいて、より高エネルギー陽子入射実験の可能性を検討し、実験計画を立案する。 (2)理論モデル計算との比較とモデルの改良 理論モデル計算コードCCONEを用いて、(2)で取得した新規データや先行研究データに対する理論モデル解析を行い、含まれる各種物理パラメータの決定とその妥当性の検討を継続して行う。必要に応じて、CCONEに使われている核反応モデルの改良を行う。
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