研究課題/領域番号 |
21H01985
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
出羽 毅久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70335082)
|
研究分担者 |
近藤 政晴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20571219)
長澤 裕 立命館大学, 生命科学部, 教授 (50294161)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 光合成 / 光収穫系複合体 / LH2 / 超高速エネルギー移動 / バイオハイブリッド |
研究実績の概要 |
紅色光合成細菌由来の光収穫系複合体(LH2)の超高速エネルギー移動系を人工的に拡張し、新規なエネルギー移動系を作成することを試みた。まず、人工蛍光色素からの励起エネルギー移動系を構築するために、LH2のB850バクテリオクロロフィルに近接するLH2αペプチドに反応性アミノ酸(システイン)を導入した変異体を作成し、そこに蛍光色素(ATTO647NおよびAlexa647)を結合させた。ATTO647NからのB850への効率の良いエネルギー移動が観測された。また、フェムト秒過渡吸収計測から、350-550 fsの速度成分を有するエネルギー移動であることを明らかにした。さらにこの色素結合LH2を脂質二分子膜に組み込んんだところ、エネルギー移動収率がさらに上昇した。この結果は、当初の目論見通りに疏水性の色素のATTO647NがLH2リング構造の内側の疏水領域に結合し、近接するB850に効率よくエネルギー移動し、サブピコ秒での励起エネルギー移動系を拡張できたことを示唆している。 一方、LH2が有するカロテノイドを経由したエネルギー移動系の拡張を試みたところ、カロテノイドの明確な寄与は観測できなかった。これは色素結合位置がカロテノイドから離れているためであると考えられ、結合位置を変更することによりエネルギー移動を可能とすることを計画中である。 電子アクセプターとして知られているフラーレン(C60, C70)とLH2とのハイブリッド化を試みた。LH2を脂質に分子膜中に導入し、フラーレンを作用させたところ、C70においてLH2の蛍光の顕著な消光が観測された。これはLH2からC70への電荷移動による消耗機構を示唆している。 これらの結果から、LH2を用いた新規なエネルギー移動系が進められている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LH2変異体の作成が順調に進んでおり、完成したものから順次バイオハイブリッド体の作成ができ、フェムト秒過渡球種計測によるエネルギー移動ダイナミクスの評価まで進められている。
|
今後の研究の推進方策 |
色素結合位置を変えるためのLH2変異体の作成を進め、バイオハイブリッド体のバリエーションを増やす。結合位置の違いから、エネルギー移動機構に関する考察を深める。また、エネルギー移動に関して理論研究者の協力を得て、これまのでフェルスター機構を拡張した一般化フェルスター機構による解析を行う予定である。 また、LH2-フラーレン複合体に対して、フェムト秒過渡吸収計測を行ない、電荷移動消耗機構のダイナミクスについてあきらかにしていく。
|