研究課題/領域番号 |
21H02080
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
樺山 一哉 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (00399974)
|
研究分担者 |
狩野 裕考 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (40774279)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 自然免疫 / ライブセルイメージング / TLR4 / リポポリサッカライド / リピドA |
研究実績の概要 |
本年度は、イメージングによるTLR4/MD2複合体の動態解析と、炎症作用を引き起こすMyD88 依存経路および抗ウイルス・抗腫瘍作用を引き起こすTRIF依存経路、それぞれで分泌されるサイトカインの発現プロモーターを解析するシステムを構築することで、内在化とTRIF 依存経路の活性化の関係を調査した。 具体的には、TLR4 と複合体を形成している MD-2 に対して蛍光標識をすることで TLR4 高発現株であるHEK-Blue hTLR4細胞におけるTLR4 の挙動を観察し、リガンドで刺激した際の内在化量を細胞内における蛍光強度から定量して比較を行った。アゴニストである大腸菌 LPS(EcLPS)刺激時ではアンタゴニストである紅色細菌由来 LPS(RsLPS)刺激時 に比べて、内在化量が有意に多く見られたことをライブセルイメージングにより解析した。次にHEK-Blue hTLR4 細胞に対して MyD88 依存経路で活性化される転写因子 NF-κBとTRIF 依存経路で活性化される転写因子IRF3によって転写翻訳されるルシフェラーゼの遺伝子を導入し、EcLPS、RsLPSそれぞれで刺激した際の転写産物を発光量より測定した。 その結果、EcLPS 刺激においては各転写因子の活性上昇が刺激濃度依存的に見られたのに対し、RsLPS 刺激においては刺激による転写因子の活性化は見られないという、明確な差異を得ることが出来た。またこれまではヒト単球由来THP1細胞を分化させたヒトマクロファージを用いた検討を中心に行っていたが、研究計画後半に実施予定であったマウス骨髄(BM)由来細胞から分化させた樹状細胞BMDCおよびマクロファージBMDMを培養し利用できる系を本年度に構築できたので、今後はこれらの細胞を用いた上記解析も実施する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画目標としていた、イメージングによるTLR4/MD2複合体の内在化能と、NF-κB経路、IRF経路に対応したルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて測定したTLR4リガンドのシグナル伝達特性に、相関があることを実証できた。これにより、その他の特徴的な活性を有するTLR4リガンドがどのようにTLR4/MD2複合体を内在化させるのか、より詳細に検討することが可能になった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、高感度レポーターアッセイに用いたNF-κB経路、MAPK/AP-1経路、IRF経路のうち、MAPK/AP-1経路に関しては、内在化能との顕著な相関は見られないことが判明した。今後は、残りのNF-κB経路とIRF経路で解析を行う予定である。またリガンド刺激から内在化に要する時間(2時間以内)とサイトカイン分泌活性評価に要する時間(24時間後)にタイムラグがあるため、刺激後数時間で反応する分子(TLR4/MD2複合体の内在化に関与するTRAM/TRIFおよびこれに関連する分子)の変動も併せて検討する予定である。
|