腸球菌V-ATPaseは、ATPのエネルギーを利用して回転しながらNa+を輸送する膜タンパク質であり、腸球菌の生育に重要な役割を果たしている。我々は、腸球菌V-ATPaseの阻害剤を発見し、多剤耐性腸球菌に対する抗菌薬としての可能性を見出した。本研究では、クライオ電子顕微鏡を用いて、阻害剤が結合した腸球菌V-ATPaseの膜内複合体の詳細な構造を解明した。得られた構造・機能解析情報を統合することにより、①本酵素のNa+輸送メカニズム、②阻害剤によるNa+輸送阻害メカニズム、③Na+輸送とH+輸送の分子メカニズムの違いを明らかにした。現在、得られた情報を基に抗菌薬の開発を進めている。
|