研究課題
鉄は生物に必須の元素で、植物は土壌から根により吸収しヒトを含め従属栄養生物は鉄の摂取を植物に依存している。一方、鉄の過剰蓄積は有毒なため、鉄の吸収・輸送は厳密に制御される必要がある。そのため、植物は進化の過程で鉄吸収・輸送の高度な制御システムを構築してきたと考えられている。これまでの研究でその一部は明らかになってきたが、まだ全容の理解には至っていない。私達は、植物の鉄欠乏応答で重要な役割を担っている短鎖ペプチドFEP1を同定した。本課題研究では、その機能の解明を通して植物の鉄欠乏応答の全容理解を目指している。R5年度は、主に鉄欠乏を指標に同定した変異株の解析、FEP1と相互作用するBTSとの結合解析、FEP1の異種組織での発現による組織間移動に関する調査、シダ植物のFEP1類似遺伝子の解析とシダ植物における鉄欠乏遺伝子発現ネットワーク調査、などを行った。その結果、2つの鉄欠乏応答回復変異株ags2とags3は同一遺伝子の同一変異を持つことが判明、解析の結果、恒常的鉄欠乏応答を誘導するミトコンドリアmRNAの安定性異常を抑えるRNA代謝関連遺伝子の変異であることが判明した。これまでこの遺伝子の機能解析の報告はなく、私達の解析により、このAGS2遺伝子がミトコンドリアmRNAの品質管理にかかわっており、さらにある特定のミトコンドリア機能を通して様々なストレス応答に関わっている可能性を見出した。今後、ミトコンドリア遺伝子発現について新たな研究展開が大いに期待できる。また、上述のFEP1の移動に関する様々な解析により、FEP1は細胞間を移動する可能性が示唆された。さらに、双子葉及びシダ植物の解析からFEP1は維管束組織の機能と密接に関わっていることが強く示唆され、今後の研究の方向性を明示できたことは意義深いと考える。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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