研究課題
ニーマン・ピック病C型 (NPC) は中枢神経系障害および肝機能障害を主徴とする遺伝病であり、国の難病に指定されている。NPCの発症率は12万人に1人であり、多くの患者が幼少期に発症し、10歳前後で亡くなられる。NPCは細胞内コレステロール輸送を担う蛋白質 (NPC1またはNPC2) の欠損が原因で、細胞内にコレステロール及びスフィンゴ糖脂質が蓄積する。NPCの唯一の治療薬ミグルスタットはスフィンゴ糖脂質合成酵素の阻害薬であり、脳内のスフィンゴ糖脂質レベルを減少させ、神経脱落を抑制する。しかしながら、治療効果は限定的であり、より有効な治療戦略の開発が望まれている。本研究ではこれまでに、セラミド代謝酵素の阻害がNPCの治療につながることをNPC細胞やNPCマウスを用いた解析により見出している。そのため、本研究ではセラミド代謝酵素とNPC発症との関連性を解析し、NPCの病態発症機構を解明すること、また、セラミド代謝酵素を阻害する化合物の開発を試み、NPC治療薬を創出することを目指して研究を行っている。本年度は下記の研究成果を得た。・NPC患者および健常人から採取した血漿におけるスフィンゴ脂質量を網羅的にLC/MS/MSにより定量したところ、NPC患者の血漿において、多種類のスフィンゴ脂質のレベルが高いことが確認された。・NPC1欠損マウスの小脳ではミクログリア及びアストロサイトが活性化することが知られている。本研究では、NPC1欠損マウスのセラミド代謝酵素を遺伝的に欠損させると、ミクログリア及びアストロサイトの活性化が抑制されることを見出した。・化合物ライブラリー(約20万種)からセラミド代謝酵素に阻害活性を有する化合物を探索したところ、139種類のヒット化合物を得ることに成功した。さらに、ヒット化合物の特異性をカウンターアッセイにより確認し、46化合物に高い活性が認められた。
2: おおむね順調に進展している
マウスおよびヒトにおける病態解析、およびスクリーニングが計画通りに進んでいるため。
本研究ではこれまで、NPCにおける中枢神経系障害やグリア細胞活性化に対するセラミド代謝酵素の関与をマウスレベルで行ってきた。今後は、細胞レベルで詳細なメカニズムも解析する。また、NPCでは肝機能障害も顕著であるため、今後は、肝機能も解析する。スクリーニングに関しては、ヒット化合物がNPCのコレステロール蓄積を軽減するかどうか、細胞レベルで評価する。また、スクリーニングにより得られたヒット化合物の薬効をマウスで評価するための薬効評価系も構築する。
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