研究課題
組織弾性や残量応力に注目して大脳の形成に関わる力学的なメカニズムを解析する目的でスタートした本研究は,まず,先行研究で構築した原子間力顕微鏡による弾性率計測やレーザー焼灼の技術を脳原基壁の内面(頂端面)に対して用いて,脳室に向かって凹な頂端面(大脳皮質予定域)と脳室面に対して凸な頂端面(大脳基底核予定域)を比較し,Fアクチン集積度が「凹な頂端面>凸な頂端面」であること,レーザー処置に対するリコイルの大きさに「凹な頂端面<凸な頂端面」であることを見出し,なぜ隣り合う大脳領域で凹と凸という異なる内面形状が生じるかについて初めての説明となる一つの力学的シナリオを示した.次に,大脳と周囲組織(表皮と骨形成開始前の頭頂部結合組織,合わせて以降「頭皮」と呼ぶ)の間の力学的関係を外科的残留応力開放試験を通じて解析し,外方成長する大脳は表皮を周方向に伸ばし,一方表皮は弾性と収縮性に基づき大脳から脳幹にかけてを内方へ拘束していると判明した.続いて,大脳皮質原基内の異なる細胞群の間の力学的協働(詰め物役・圧縮材役のニューロンと放射状の形状が張力材として機能する神経前駆細胞が壁全体を「自縛」的に安定化する)ことによる壁の強度保証機構について見出した.さらに,脳脊髄液をたたえた脳室の圧を計測する差圧計システムを立ち上げ,これまで未知であった胎生早期マウス脳室圧を測ることに成功し,脳室圧が脳の周囲・外部からの力学的負荷に大きく影響されて成立していることも見出した.一方,脳室を経由してマクロファージが大脳原基壁の内面から壁に入りミクログリアになることを見出した.脳室の圧を受け止める脳原基壁内面を構成する神経前駆細胞集団の個々の先端(頂端面)においてカルシウム濃度上昇を観察し,薬理学的ないし力学的介入を可能とする系を立ち上げた.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neocortical Neurogenesis in Development and Evolution
巻: 1 ページ: 119-136
10.1002/9781119860914.ch7
Cell Reports
巻: 42 ページ: 112092
10.1016/j.celrep.2023.112092