研究課題/領域番号 |
21H02884
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
南沢 享 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40257332)
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研究分担者 |
井上 天宏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (00349557)
赤池 徹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20647101)
暮地本 宙己 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60632841)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 動脈管 / 転写因子 / 内膜肥厚 / メタボローム / ミトコンドリア / 薬物治療 |
研究実績の概要 |
本研究は動脈管機能的・構造的に閉鎖する分子機序を解明し、新たな治療法を開発することを 目的とする。そのために、3つの具体的な研究 課題:1)転写因子TFAP2Bが動脈管閉鎖をきたす機序の解明、2)動脈管でのミトコンドリアの働きとメタボロームの解析、3)内膜肥厚を促進する、選択的動脈管収縮因子(化合物)の同定、を具体的な研究項目に設定し、実行した。 1.転写因子TFAP2Bが動脈管閉鎖に果たす役割を解明するために、ラットTfap2b遺伝子をクローニングした。 2.動脈管の酸素感受性の機序にミトコンドリアでの活性酸素の産生やATP消費が関与することが示唆されているが、動脈管の代謝動態の特徴は十分に理解されていない。そこで細胞外フラックスアナライザーを用いて、ラット動脈管のミトコンドリア機能特性と代謝動態を検討した。種々の検討の結果、ラット動脈管という微小血管組織でも、細胞外フラックスアナライザーを使った代謝動態の観察が可能であることがわかり、次年度以降の研究への大きな足がかりとなった。 3.動脈管開存症の治療に使用されるシクロオキシゲナーゼ阻害剤は動脈管収縮作用がある一方、プロスタグランジンE2-EP4による内膜肥厚形成を抑制するため、本研究では内膜肥厚形成を促進し、かつ選択的に動脈管収縮作用を有する因子の候補として、転写因子Nr4a1及びポリフェノールが動脈管閉鎖に及ぼす影響を検討した。ポリフェノールの母体投与はラット胎仔の動脈管早期閉鎖を促す可能性があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルス感染症の影響があり、細胞外フラックスアナライザーの機器を保有している共同研究者の実験施設に立ち入れない期間が長引いてしまったこと。ラット転写因子TFAP2Bのクローニングが想定していたよりも困難であったこと、などから研究が想定よりやや送れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.転写因子TFAP2Bが動脈管閉鎖に果たす役割の解明: 転写因子TFAP2Bによって、どのような遺伝子の発現が制御されて動脈管閉塞を促すのか、その機序の解明を目指す。本年度は、1)ラットTfap2bをラット動脈管平滑筋細胞に強制的に発現させて、変化する遺伝子群を同定する。また、ラットTfap2b のsiRNAを用いて、発現抑制することによって変化する遺伝子群を同定する。これらによって、Tfap2b下流の転写因子カスケードを解明する。 2.動脈管メタボロームの特徴を知る: 動脈管の酸素感受性の機序にミトコンドリアでの活性酸素の産生やATP消費が関与することが示唆されている。本年度は、1)動脈管代謝産物の網羅的メタボローム解析により、他の大血管との代謝特性の相違を明らかにする、2)動脈管ミトコンドリアの微細構造とその機能特性を明らかにする。 3)細胞外フラックスアナライザーを用いて、動脈管代謝動態を調べる。 3.内膜肥厚を促進し、選択的に動脈管を収縮する因子(化合物)を同定する:本年度はNr4a1やポリフェノールによる作用をより詳細に調べる。さらに化合物ライブラリーを用いる実験系の確立を目指す。
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