研究課題
腎臓病が腎内微小血行動態変化と非血行動態変化(炎症、線維化)により発症し、進展することが判明している。血行動態・非血行動態変化には相互連関が存在し、内皮障害はこの連関において中核的な役割を果たすと考えるに至った。連関機序の時空間的な包括的理解の深化をめざし、腎臓病の有効な治療法開発につなげることを目標とする。内皮障害はROS/NO不均衡を特徴とする。これを起点として、糸球体、尿細管間質領域ともに、内皮/上皮病態連関が形成され、Keap-1/Nrf-2経路(酸化ストレス応答機序)、NLRP3-inlammasome経路(慢性炎症)、Wnt/β-catenin経路(線維化)経路を介して、微小血行動態変化、慢性炎症、線維化が輻輳して病態が形成され進行する。内皮障害がいかなる機序で、腎障害の2大基盤病態である血行動態変化と非血行動態変化(炎症、線維化)を惹起し、CKD発症と重症化に関与するのかを解明することを目的とする。1)TRPC5/6を介したCaイオン動態がGFR調節に関与することを発見した。Keap-1/Nrf-2経路は抗酸化作用を介して、TRPCチャネルを制御し、上皮/メサンジウムのCa濃度変化を介して濾過面積、GFR調節に関与することを解明した。2)内皮/上皮病態連関の分子機序解明①正常内皮機能(eNOS/NO/sGC/PKG経路)はNLRP3-inlammasome経路(慢性炎症)を負に制御していることを明らかにした。②内皮機能障害によりこのブレーキが解除され、ROS/NO不均衡がメディエーターとして働き、炎症が惹起・増幅される(内皮/上皮病態連関)。③糸球体障害(ポドサイト障害)、尿細管間質障害の両者に内皮/上皮病態連関が関係することを明らかにする。 内皮障害、ROS/NO不均衡、内皮/上皮病態連関の改善を介した治療戦略の構築へとつなげたい。
2: おおむね順調に進展している
事前に探索的研究を実施し、必要な遺伝子改変動物の準備(作成、繁殖)ができており、順調に進捗することができた。小動物におけるGFR測定法は確立したものがなかったが、 Two-photonレーザー顕微鏡を活用してin vivoで計測する実験系を確立することができた。これらを活用することができた。また実験補助員、大学院生、分担研究者が研究手技に習熟しており、研究を加速することができた。
以下に順次取り組む。1)Keap-1/Nrf-2経路によるGFR・糸球体血行動態調節機序、腎保護機序の解明探索研究により、Keap-1/Nrf-2経路がGFR制御に重要な役割を果たすことが判明した。単一ネフロンGFR測定系でKeap1 Knockdown(Nrf2活性化モデル)マウスのGFRが上昇することを初めて発見した。GFRは、糸球体内外の静水圧/膠質浸透圧差、濾過係数Kf値により規定される。Nrf2活性化で輸入/輸出細動脈、糸球体内圧は変化しないことが示され、濾過係数Kf値変化の関与が示唆された。TRPC5/6を介したCaイオン動態がGFR調節に関与することを発見した。Keap-1/Nrf-2経路は抗酸化作用を介して、TRPCチャネルを制御し、上皮/メサンジウムのCa濃度変化を介して濾過係数、GFR調節に関与することを解明した。(1)生体動物における正確なGFR測定系の確立:3つの方法を活用する。①2光子レ-ザ-顕微鏡を用いたin vivo imaging法によるsingle nephronGFR測定、②経皮的GFR測定:FITC-sinistrinを投与。③イヌリンクアランス計測:イヌリン-GFPの血中消失速度より算出。(2)Keap1/Nrf2によるGFR制御、糸球体血行動態変化の解析Nrf2-KO、Keap1-KD、また各マウスにRTA dh404(Nrf活性化剤、Reata社提供)投与後のGFR変化を計測する。(3)濾過係数Kf、有効濾過面積、糸球体構成細胞の収縮・弛緩の解析培養メサンギウム・糸球体上皮細胞を用い、アンジオテンシンII、ATP刺激による細胞内Ca2+濃度、細胞容積変化、RTA dh404による変化を評価する。(4)TRPC5/6阻害薬を用いて、糸球体内Caイオン濃度変化(in vivo imaging法で解析)、GFR変化を評価する。
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すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
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