研究課題
水銀は人体に有害な元素であり、揮発しやすい化学的性質により、全地球規模での汚染が問題となっている。大気中に放出された水銀は雨水等に取り込まれ、河川や海洋へと移行し生物に蓄積される。水銀は生物濃縮されやすい元素であるため、食物連鎖を通じて大型魚に濃縮され、魚食を介した水銀摂取の影響が懸念されている。人への暴露経路となる大気・水圏での水銀循環を理解することは人への影響を低減していく上で重要な研究課題である。一方で、水銀の大気に滞留する時間は1年以上であるため、様々な発生源から全地球規模で広がる水銀の起源を特定することは難しい課題となっている。水銀同位体には重元素特有の同位体効果が作用し、化学反応固有の同位体選択的変動(非質量依存同位体分別)が起こるため、水銀の環境動態を調べる指標として期待されている。しかし、全地球規模での水銀同位体比の変動機構については、未だ不明な点が多い。本研究では、水銀同位体には核スピンの有無により、化学反応固有の非質量依存同位体分別が起こることに着目し、大気・水圏で観察される水銀同位体分別機構の理解を目指し、環境を模擬した同位体分別実験を進めている。本年度は特に大気圏における環境を模擬した実験を行なった。高層大気環境を模擬した実験では、オゾン層で吸収される波長の紫外線を用いて、水銀の光還元反応実験を行なった。光還元の反応速度は同位体間で異なり、特に204Hgの偶数同位体に非質量依存の同位体分別が観察された。これらの結果から核スピンを持つ199Hgや201Hgから放出される紫外線が204Hgに干渉することが影響しているのではないかとの仮説が得られた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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