研究課題/領域番号 |
21H04365
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中澤 達哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60350378)
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研究分担者 |
近藤 和彦 立正大学, 人文科学研究所, 研究員 (90011387)
森原 隆 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70183663)
高澤 紀恵 法政大学, 文学部, 教授 (80187947)
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
小森 宏美 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50353454)
池田 嘉郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80449420)
石川 敬史 帝京大学, 文学部, 教授 (40374178)
古谷 大輔 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (30335400)
松原 宏之 立教大学, 文学部, 教授 (00334615)
小原 淳 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386577)
正木 慶介 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (00757172)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 共和政 / 君主政 / 共和政と君主政の乖離 / 共和政と民主政との連動 / 共和政と国民国家との結節 / 共和政と連邦制の親和 / 「王のいる共和政」 / 「王のいない共和政」 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、18-19世紀の市民革命期に欧米諸国で形成された共和政の特性を、「王のいる共和政」を起点にしつつ、君主政・立憲制・市民権・国民国家・連邦制・独裁などの国制の諸概念とその実態を参照軸に、国際比較の上で再検討する。これによって、必ずしも民主政と等価の関係にない近代共和政がもつ多様性を確認しつつ、「王のいる共和政」から「王のいない共和政」への転換に着目することで、近代史の総合的な再構築を図る。つまり、欧米近代に内包される複数の様態に着目し近代の総点検を行うことにより、旧来の主権国家像および国民国家像の相対化、ひいては、近代歴史学の従来の認識とその世界史像に転換を促すことを本科研の主眼としている。 今年度は、この目的の多くを達成することができた。というのも、本科研の研究代表及び分担者の多くがかかわっていた前科研「ジャコバン主義の再検討:「王のいる共和政」の国際比較研究」(2017-2020)の成果として、中澤達哉編『王のいる共和政:ジャコバン再考』を岩波書店から6月末に出版した。これにあわせて、2022年9月に1度、同10月に2度、2023年3月に1度、西洋政治思想史、日本史、西洋史の研究者による拙編著の合評会をリアルタイムオンラインで開催したのである。この合評会での総合討論には、2021~22年度の本科研の研究成果をクロスさせる位置づけで臨んだ。西洋政治思想史研究者、日本史研究者との総合討論は本科研の方向性を改めて確認し、かつ、より多角的な論点の存在を自覚させてくれた。次年度に向けて、本科研の研究活動を多様化する方向に向かわせてくれたのである。2023年度に開催する国際ワークショップを充実したものにすることができるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は、本科研の前身にあたり、中澤が代表を務めた「ジャコバン主義の再検討:「王のいる共和政」の国際比較研究」(2017-2020)の成果として、中澤達哉編『王のいる共和政:ジャコバン再考』を岩波書店から6月末に出版した。これを受けて、2022年9月14日に本科研メンバーのアメリカ史研究者による同著の書評会を開催した。さらに、同10月22日には「西洋政治思想史と西洋史学との対話」と題して、また、同年10月23日には「日本史学と西洋史学との対話」と題して、西洋政治思想史、日本史、西洋史の研究者による拙編著の合評会をリアルタイムオンラインで開催した。さらに、2023年3月21日には同時期に出版された『比較革命史の新地平』(山川出版社 2022年)と拙編著の執筆者によるクロス書評会を同じくリアルタイムオンラインで開催した。計3回の合評会に計600名近い大学教員・高等学校教諭・大学院生・マスコミ関係者が視聴参加し、本問題に関する関心の高さを改めて知るとこができた。 3回の合評会では、本科研が2021年以来構築している、以下の4つの班に分かれるかたちで総合討論のテーマを決め、役割分担を行ったうえで、活発な総合討論を行った。①「共和政と君主政の乖離」班(石川敬史、小山哲、正木慶介、中澤達哉)、②「共和政と民主政との連動」班(松原宏之、高澤紀恵、近藤和彦)、③「共和政と国民国家との結節」班(小原淳、小森宏美、中澤達哉)、④「共和政と連邦制の親和」班(池田嘉郎、森原隆、古谷大輔)である。 この3度の合評会を経て、従来の認識である①から②への移行とその断絶のほか、連続的側面の存在、そして②への転換の社会状況を解明しつつある。これら①②から、どのように③④が影響を受けたかを現在検討中である。つまり、現在までに活動によって、本科研の基本軸を構築することができたのである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、ヨーロッパ国際ワークショップ「「王のいる共和政」から「王のいない共和政」へ」を通じて、22年度までの研究成果を公開する。当該研究会合を複数の国外連携研究者とともに開催する予定である。これにより、必ずしも民主政と等価の関係にない近代共和政の多様性を確認する。なお、19世紀以降、欧米の多くの地域で「王のいる共和政」から「王のいない共和政」への転換がおこり「民主政的共和主義」が定着した。この転換は各国特有の条件に規定されるはずである。当該ワークショップでは、そうした地域的偏差を意識しつつ、転換の根拠のほか、新たな「民主政的共和主義」の展開とその初期の問題点を、「君主政的共和主義」との位相のもとに検証する。その際、22年度までの成果を踏まえ、両者の断絶面のみならず連続面も究明し、多様な実相に迫りたい。当該ワークショップはおもに本科研内の「共和政と君主政の乖離」班(正木慶介、中澤達哉、研究協力者の阿南大、連携研究者のオクスフォード大学名誉教授ロバート・エヴァンズおよび中央ヨーロッパ大学教授バラ―ジュ・トレンチェーニ)を中心に企画する。 2024年度は、23年度の成果を踏まえて、24年にはアメリカ国際ワークショップ「共和政と民主政の連動:市民権と主権の動態」を実施する。国外連携研究者とともに開催する予定である。民主政的共和主義への一元化の過程における市民権・主権概念の再定義および享受主体の変容など、一連の動態を社会史的アプローチも採用しながら総合的に議論したい。なお、当該ワークショップはおもに本科研内の「共和政と民主政との連動」班(松原宏之、石川敬史、中澤達哉)を中心に企画する。
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